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トップページ病気について > フェレットの病気~インスリノーマ~

低血糖症のフェレットの飼主様へ

1.低血糖症について

 動物の血液中の糖分は、常に一定の範囲内に保たれるように調節されています。通常、血糖は食後に増加し、空腹時に減少しますが、正常範囲内での変化にすぎません。ところが、その正常範囲を超えて血糖が増減する場合があります。その血糖が減少しすぎている場合を低血糖症といいます。

2.低血糖症の原因

 血糖が一定に保たれるためには、体内で分泌されるホルモンの働きが重要です。血糖が増加した場合、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンの効果で血液中の糖分が消費されたり、血液の外側(主に肝臓や筋肉)に蓄積されて血糖が減少します。また、血糖が減少した場合は副腎や膵臓から分泌されるホルモンによって、食事からの糖分の吸収量を増やしたり、体内に蓄積していた糖分を血液内に戻します。

 低血糖症はこのバランスが崩れると発生します。極度の衰弱によって、体内の糖分が減少したり、インスリンの過剰分泌によって、生体機能が維持できないほどの低血糖になる場合があります。体内の糖分が減少しただけであれば、外から与えることで回復の見込みがあります。しかし、インスリンによる低血糖の場合はかなり深刻です。体内には糖分が十分にあるのに、血液中の糖分が減少してしまいます。

 フェレットのインスリン過剰分泌の原因は、主にインスリノーマという膵臓の腫瘍によって引き起こされます。

3.低血糖症の症状

 フェレットの血糖値の正常範囲は文献によって様々ですが、バンビ動物病院では安静時の血糖値が70mg/dl以下になった場合をインスリノーマと判断しています。(興奮したりストレスがあると血糖値は上昇します。) 低血糖症になると、倦怠感や運動量の減少がみられ、ボーとしていることが多くなります。症状が進むと気持ち悪そうにしたり、よだれを垂らしたりします。さらに低血糖が悪化すると、グッタリして立てなくなり、失禁をしたりする場合もあります。急激に低血糖となると痙攣などの発作症状がみられます。これは、脳神経系が血液中のブドウ糖からしか栄養を得られないために起こる症状で、この状態が長く続くと命の危険や後遺症が残る可能性があります。

4.インスリノーマについて

 インスリノーマは膵臓のランゲルハンス島といわれる部位のβ細胞に発生する悪性の腫瘍です。この腫瘍細胞から通常よりも多量のインスリンが分泌されるようになり、低血糖症となります。腫瘍は膵臓に原発であったり、肝臓など膵臓の近くの臓器に発生したりします。また、将来的には、膵臓内で広がっていき、他の臓器へ転移します。

5.インスリノーマの治療

 フェレットのインスリノーマの治療は大変困難です。きりがおか動物病院では、飲み薬を自宅で投与していただいて低血糖を改善させます。目的はフェレットが日常の生活を快適に過ごせるようにするための維持療法です。投与薬はプレドニゾロンというステロイドです。ステロイドにより、インスリンに対する抵抗性をつけ、さらに血糖を増加させます。

 基本的に、糖分の経口投与による補給は行わないでください。投与直後の血糖は増加しますが、その後インスリンの反応により、さらに増悪した低血糖が引き起こされます。命に関わるような発作症状を起こしたとき以外は、早めに動物病院に連れて来て頂くのが最善です。(緊急な処置が必要な発作を起こした場合は、砂糖などの糖分を舐めさせてから、急いで動物病院へ連れて行ってください。なお、キシリトールなどの甘味料は、甘くても糖分補給には効果がないと思われます。犬ではキシリトール中毒が報告されていますので、与えないほうがよいかもしれません。)

6.インスリノーマの診断から治療までの経緯

  • 症状と血液検査から低血糖症を診断します。フェレットの血糖値が70mg/dl以下の場合はほとんどがインスリノーマ疑いとなります。
  • 生命の危険な場合は、入院点滴や経口投与でブドウ糖の補給をしてからステロイド注射により状態の改善を図ります。
  • 状態が安定している場合は、自宅でステロイドの経口投与治療を実施します。初回は、低容量のステロイドを1日1回投与することで維持します。数日後、再検査をして血糖値や症状が安定しているか確認します。維持できていない場合は投与量を増やします。血糖を維持できるステロイドの最低容量と最長投与間隔を調べるために、数日毎に血液検査をします。また、投与からの経過時間によってステロイドの効果が弱くなりますので、時間毎の検査も必要です。
  • 投与量と投与間隔が決まったら、数週間毎に検査を実施して、血糖値が安定に維持できているか確認します。血糖値が低下していて低血糖症状が現れる場合は、さらに投与量を増やしたり、投与間隔を短くします。
  • 血糖値や症状が非常に安定していて、投与量を減量させたり、投与間隔を延ばせる場合は、慎重に実施します。最終的にステロイドの投与を中止しても安定している場合はインスリノーマ以外の低血糖症と診断されます。しかし、フェレットの場合はこのようなケースは希で、ステロイドの投与を維持しない限り血糖値は安定しません。

7.治療の問題点

  • ステロイド投与により血糖が増加してフェレットが元気になっても、お腹の中のインスリノーマはなくなりません。逆に腫瘍が広がったり転移したりしている可能性もあります。ステロイドはあくまで血糖の維持が目的で、腫瘍に対しては効果がありません。
  • インスリノーマは腫瘍ですので徐々に悪化します。それに伴い血糖を維持するためのステロイドの投与量も増やしていく必要があります。ステロイドの長期間・多量の投与は副作用を引き起こす場合があります。副作用の主な症状は、胃腸障害による黒色便の排泄や、食欲・飲水量の増加に伴う肥満、免疫機能の低下などです。しかし、低血糖症状の方が緊急で命に関わってきますので、ステロイドの投与を中止することは出来ません。副作用に対しては症状が出たらそれにあわせた薬を使用し対応します。
  • 病状が進行すると、ステロイドでも血糖を維持できなくなります。そうなると、長期間の点滴入院によって血糖の維持が必要となりますが、かなり困難な治療となってきます。

8.外科手術について

 きりがおか動物病院でのインスリノーマの治療は、第一選択として内科投薬治療をお勧めしています。しかし、外科手術によって、ステロイドの投薬期間の延期や副作用の軽減などフェレットの生活環境の改善が期待できる場合、また、他にも開腹手術が必要な病気を持っていて延命が期待できる場合には手術をします。

 手術は開腹し、膵臓のインスリノーマ塊を摘出します。また、転移が確認された場合、摘出できる範囲でそちらも切除します。

 インスリノーマを摘出することで、低血糖の改善や投薬量の軽減が期待できます。

 手術は2泊3日入院が必要となります。

 インスリノーマの手術をご希望される場合は、獣医師に納得がいくまでよく相談して、リスクについてご理解頂くことを推奨いたします。

9.外科手術の問題点

  • 低血糖は手術の危険性を高くします。特に、麻酔中の急変の可能性があります。
  • 手術によって開腹してみない限り、インスリノーマが摘出できるかどうかは分かりません。開腹後腫瘍を摘出できない場合は、そのまま何もせずに閉腹します。
  • インスリノーマが摘出できても、約7割以上の確率で再発します。そのため、術後も症状に注意し、定期的な血液検査が必要です。
  • インスリノーマを摘出した後、高血糖になる場合があります。通常は一時的な反応ですが、膵臓のインスリン分泌機能が回復しないと、永久的な高血糖症による糖尿病になってしまう可能性があります。

10.ジアゾキシドについて

 ジアゾキシドは、ステロイドに比べて、副作用が少なく、インスリンの分泌を抑える事のできる飲み薬です。日本では2008年4月に認可が下りたばかりのお薬で、値段も高価です。しかし、ステロイド投与量を減量し、副作用を軽減、さらにインスリノーマのフェレットの生活の質を向上させるという点で有効と思われます。興味・ご希望があれば、担当獣医師とよく相談し納得の上注文して下さい。

11.その他の治療法

 ビール酵母やアガリクスなどの栄養剤を投与する方法がありますが、効果については不明な点が多いようです。ステロイド療法と併用することで、ステロイドの投与量を抑えることが出来るかもしれません。

 

2008年12月改
きりがおか動物病院
院長 関口 諭