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トップページ病気について > フェレットの病気~副腎腫瘍~

副腎腫瘍のフェレットの飼い主様へ

1.副腎について

 副腎とは、腹空内に2つある米粒程の小さい臓器です。左右2つの腎臓の頭側部にそれぞれ1つずつあります。副腎からは、生きていく上で重要な数種類のホルモンが分泌され、体の機能を調節しています。

2.フェレットの副腎腫瘍の症状について

 フェレットが副腎腫瘍になった場合の問題点として、分泌されるホルモンの問題と、腫瘍そのものの問題との2通りがあげられます。

 フェレットは、腫瘍化した副腎から分泌されるホルモンが犬や猫と異なります。主に、性ホルモン(エストロゲン、アンドロゲン)が分泌され、それに伴った症状が現れます。表面上の症状では、尾から腰または頭部から肩にかけての進行性の脱毛や乳首の発赤、メスの外陰部の腫大やオスの前立腺肥大に伴う排尿障害です。 また、発情やサカリのような行動の変化や体臭の変化がみられる場合もあります。長期間続くと、全身的な脱毛や、外陰部のかぶれ、脂肪の蓄積や筋肉の衰弱、尿閉による腎不全、骨髄抑制による悪性貧血などが起こる場合もあります。

 当病院で手術したフェレットの約3割が悪性腫瘍でした。良性でも悪性でも腫瘍が大きくなるかどうかは個体差があります。腫瘍が大きくなってくると、胃や腸を圧迫して食欲不振になったり、嘔吐がみられたりします。また、腎障害・肝障害・循環障害になる場合もあります。腫瘍が悪性であれば、転移を起こし、手の施しようがなくなることもあります。

3.副腎腫瘍の診断方法

  • i  脱毛や外陰部の腫大、乳首の発赤など外観上の症状から判断します。
  • ii  触診による腫瘍の触知や超音波検査によって判断します。
  • iii 手術をして、実際に副腎を確認して判断します。

 通常 i のみでもほとんどの場合副腎腫瘍です。または i と ii の両方が確認されれば、まず間違いありません。ただし、i や ii は外側からの検査ですのであくまで仮診断です。確定診断には iii しかありません。

 また、悪性腫瘍か良性腫瘍か診断するには、手術をして腫瘍を摘出し、病理学的に検査をする必要があります。

 血液検査によるホルモン量の同定などで腫瘍の有無を判断するのは困難ですが、参考にすることができます。また、レントゲンや超音波検査では、腫瘍が大きくなってからでないと診断できません。

4.治療法について

 フェレットの副腎腫瘍の治療は、第一選択肢が外科手術による摘出となります。良性でも悪性でもお腹の中に腫瘍がある以上、手術ができる状態であれば、早めに腫瘍を取り除いた方が、後々問題になりにくいと考えられます。ただし、手術が選択できない場合は、内科療法となります。

Ⅰ外科手術までの経緯について
  • まず、先に述べた副腎腫瘍の診断方法によって、仮診断をします。
  • 腫瘍がすでに見つかっているならば、大きくならないうちに出来るだけ早めに摘出手術となります。
  • 外観上の症状しかみられず、腫瘍が確認できない場合は、 試験的に手術をして副腎の色や形などの異常から腫瘍がないかどうか判断するか、腫瘍が見つかるまで手術を延期します。手術を延期する場合、いつ腫瘍が確認できるほど大きくなるか分かりませんので、出来るだけこまめに検査を継続します。
  • 外科手術を行う前に、フェレットが手術に耐えられるかどうか検査をします。年齢や体力、他の疾患の有無を血液検査やレントゲン撮影で判断します。問題がある場合はまず、そちらの治療から始めます。
  • 問題がない場合は試験的開腹手術を行い、副腎腫瘍を確認した時点で確定診断し、副腎腫瘍摘出手術を行います。手術は左右の副腎のうち大きく腫瘍化している側のみを摘出します。残りの副腎は生きていくために残しておかなければなりません。
  • 術後は手術当日を含めて2泊3日間入院です。その後、フェレットの体調が整えば退院となります。退院後の約1週間は、抗生剤の投与と傷口の消毒を自宅で行っていただくこととなります。また、1~2週間後に抜糸のために来院していただくことになります。抜糸は5分ほどで終わります。
  • 抜糸が終われば、いったん治療は終了です。一般的に外陰部の腫れは1~3週間で収まります。脱毛が改善されるのは3~12ヶ月ほどかかる場合があります。また、残された副腎が腫瘍化しないか、症状の経過観察が必要です。
Ⅱ外科手術の利点
  • 副腎腫瘍から過剰に分泌されていたホルモン量が減少するため、脱毛や外陰部の腫大などの発情症状が改善されます。また、骨髄抑制による貧血や雄の前立腺肥大による排尿障害を事前に防げます。
  • 転移などの悪性腫瘍(ガン)による危険性を取り除くことにより、延命効果が期待できます。きりがおか動物病院で副腎腫瘍の手術をしたフェレットのうち約3割が副腎皮質腺癌などの悪性腫瘍でした。転移した場合、主に肺や肝臓にみられる場合が多いようです。
Ⅲ外科手術の問題点
  • 副腎は本来生きていく上で重要なホルモンを分泌している臓器なので、それを取り除く手術はかなりフェレットに負担をかけることとなります。手術中または術後数日間に死亡する例が報告されています。文献によっては約10%の死亡率を記しているものもあります。不測の事態に対しては万全の体制で手術に挑んでいますが、100%安全といえる手術では決してありません。
  • 副腎腫瘍の手術で摘出できるのは、副腎1つだけです。手術の際、肉眼的に左右の副腎を比較して、大きい方や異常のある方を摘出します。そのため、肉眼的に正常と思われる残された副腎が機能的に正常であるとは限りません。一見正常に見えても細胞レベルでは腫瘍化しており、ホルモンの分泌が異常を来している場合があります。この場合、手術後に症状の改善がみられなかったり、別の機能障害を起こす可能性があります。
  • 副腎腫瘍は大きくなってしまうと摘出できない場合があります。副腎は大静脈や大動脈などの重要な血管に隣接しているため、腫瘍の大きさによっては、それらの血管を巻き込んでいる場合があります。この場合には摘出は断念せざる得ません。また、右側の副腎の場合、正常でも大静脈に接しているため、腫瘍化した右副腎の摘出は非常に危険度の高い手術となります。
  • 副腎が悪性腫瘍であった場合は転移の危険性があります。悪性腫瘍か良性腫瘍かは術後の病理検査で診断します。悪性腫瘍であった場合は、術後も経過を見ていく必要があります。
IV内科療法について

副腎腫瘍の摘出手術が困難な場合には、内科療法となります。

  • i 高齢である場合。きりがおか動物病院では6~7歳以上のフェレットに対しては、手術をしていません。
  • ii 副腎腫瘍が小さくて確認できない場合や、左右の副腎に大きさの差がない場合は、摘出できる大きさになるまで手術は延期します。
  • iii 副腎腫瘍が両側で確認された場合は、片方の腫瘍を摘出することで延命が期待できる場合以外、手術はしません。
  • iv 腫瘍が大きく、摘出できない場合。
  • v 片側の副腎腫瘍を摘出した後に反対側の副腎が腫瘍化してしまった場合、副腎は生きていく上で重要ですので摘出できません。
  • vi その他、健康上手術が危険な場合。

以上のような場合は手術はせずに、内科療法を試みるか、治療をせず経過観察を続けます。

V薬について

 内科療法に使用される薬は酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン注射用1.88)という注射薬です。副腎腫瘍の見た目の症状を改善するために使用します。この薬は脳下垂体に作用し、副腎から放出される性ホルモンの分泌量を減少させます。その結果、脱毛や外陰部の腫大などの発情症状が改善されます。また、骨髄抑制による貧血や前立腺肥大による排尿障害の回避にも有効であると思われます。

 毎月1回の投薬注射で効果が見込まれます。効果は早い場合1ヶ月、遅い場合は2~3ヶ月でみられます。発毛がみられる場合の前兆として皮膚が青黒く変色する場合があります。3ヶ月投与を続けても効果がみられない場合は投与量を増やします。

VIリュープリンの問題点

 この薬は直接副腎に作用するわけではありません。抗ガン作用もありませんので副腎腫瘍に対する検査は続ける必要があります。また、1ヶ月毎に投薬しないと効果が続きません。投薬を中断すると症状が再発する可能性があります。

 副作用はほとんどありませんが、数例のフェレットにアレルギー反応と思われる注射部位の腫脹と肥厚がみられました。また、オスのフェレットで投与後2~3週間後に一過性の前立腺肥大がみられました。これは初回投与直後一過性に下垂体-性腺刺激作用がみられるためであると考えられます。この作用を乗り越えた後ホルモンの分泌量が減少します。そのため、オスのフェレットの初回投与後3週間は排尿できているか注意が必要です。

 今までに数例ですが、高齢のフェレットで投与量を増やしても、全く発毛が見られないケースがありました。その場合、他の症状は改善できるケースと、全く反応しないケースがあるようです。

VII抗ガン剤について

 きりがおか動物病院ではフェレットの副腎腫瘍に対する抗ガン剤の治療を積極的には行っていません。治療例の資料が不足しているためプロトコールが確立されていません。限られた報告例を参考にした実験的な治療となるため、強い希望がない限りはお勧めできません。それでも投薬を希望される場合は以上の点を念頭に入れ担当獣医師とご相談ください。

 フェレットの副腎腫瘍に効果があると言われる抗ガン剤にミトタンがあります。人や犬・猫の副腎腺癌の治療に使用される抗ガン剤です。

VIIIメラトニンについて

 メラトニンは人の不眠などに効果があると言われる栄養剤です。フェレットの副腎腫瘍の脱毛症状に効果があると言われています。詳しい作用は分かっていませんが、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が抑制されるようです。きりがおか動物病院ではリュープリンを増量しても効果がない場合に併用を検討します。ご希望の場合は獣医師に相談して下さい。

 

2002年1月著

2008年12月改
きりがおか動物病院
院長 関口 諭