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トップページ病気について > フェレットの病気~リンパ腫~

リンパ腫及び抗癌剤治療の
フェレットの飼主様へ

1.リンパ腫について

リンパ腫とは、簡単にいうと血液の癌です。白血球という免疫機能を司る血液細胞の中のリンパ球が腫瘍化する病気です。腫瘍化したリンパ球は、血液の中だけでなく、リンパ節や脾臓、肝臓、腎臓、腸管、骨髄、脊髄など多様な部位で増殖します。その増殖した部位により、症状や検査、治療法が変わってきます。 なお、リンパ肉腫、リンパ性白血病など様々な呼び名がありますが、基本的には同じ病気です。

2.リンパ腫の症状について

リンパ腫は増殖をした部位により症状が変わってきます。一般症状は、元気・食欲の減退、削痩、微熱、脾腫などです。血液が流れている箇所(全身)のあらゆる部位にリンパ腫は発生しますが、代表的なものを以下にまとめました。

  • 多中心型リンパ腫:体表のリンパ節が大きく腫れてきます。肩や腋の下、顎、股、大腿部の皮下にあるリンパ節がシコリとして触れるようになります。また、お腹の中のリンパ節なども腫れてきます。
  • 消化器型リンパ腫:胃や腸管に腫瘍ができ、お腹の中のリンパ節が腫れてきます。下痢、血便、嘔吐が続き、下痢止めなどのお薬では治りません。
  • 縦隔型リンパ腫:左右の肺の間のリンパ節が大きく腫瘍化します。腫瘍が大きくなると咳が出たり胸水により呼吸困難になったりします。
  • 皮膚型リンパ腫:皮膚にできるリンパ腫です。見た目に皮膚病や外傷に見える場合もあります。フェレットでは希です。

脊髄リンパ腫:脳神経系に腫瘍ができ、神経症状がおこり、痙攣や麻痺などの症状が現れます。

骨髄リンパ腫:血液を造る骨髄にリンパ腫が発生します。貧血になり顔色が悪くなったり、出血が止まらなくなったりします。

3.リンパ腫の診断方法

  • まず、一般的な健康診断を行います。この段階で、体やお腹の中にシコリが触れたら、そのシコリの検査を行います。シコリが外側からの検査で見つからない場合は、レントゲン検査と血液検査を行います。レントゲン検査では、胸の中やお腹の中の腫瘍を捜します。また血液検査では、リンパ球が腫瘍化していないか、肝臓や腎臓などに異常がないかなどを調べます。
  • 視診や触診、レントゲンで見つかったシコリは、そのシコリがリンパ腫かどうか確認するために、危険な場所でなければ針を刺して中身の細胞の一部を吸い出し検査します。リンパ腫であれば、リンパ芽球と呼ばれるリンパ球が多数見つかる筈です。
  • シコリの細胞にリンパ芽球細胞があれば、間違いなくリンパ腫です。しかし、シコリが危険な場所にあり、針生検が出来ない場合があります。血液検査で、血液中にリンパ芽球が多数存在するならば、そのシコリもリンパ腫に間違いないと考えられます。
  • シコリが見つからず、血液中にリンパ芽球が多数存在する場合があります。本来、リンパ芽球は血液にはほとんど存在しません。ですから、リンパ芽球が血液中にあればリンパ腫の疑いは高いです。シコリがまだ小さかったり、脊髄や骨髄内に腫瘍細胞があると、リンパ腫を確定する事ができません。その場合、骨に穴をあけて骨髄検査を実施したり、脊髄造影検査が必要となります。検査に危険性が伴う場合もあるため、飼主様とよく相談の上検査を実施するか決定します。検査が困難な場合でも、難治性の下痢が続いたり、原因不明の貧血や麻痺が見られ、血液にリンパ芽球や白血球の数が増加している場合は、リンパ腫の疑いが強いため試験的にリンパ腫の治療を行うこともあります。

4.リンパ腫の治療方法

先に述べたようにリンパ腫は血液の癌です。リンパ腫のシコリがあっても、リンパ腫細胞は血液の中を流れています。ですから、基本的に外科手術はしません。シコリを摘出する事によって延命が期待できる場合以外は、抗癌剤治療となります。リンパ腫は抗癌剤治療により延命が期待できます。ただし、リンパ腫は完治できません。生活観の向上や延命効果はあっても血液中の腫瘍を完全に除去する事はできません。抗癌剤治療は、腫瘍の状態によって治療間隔を伸ばす事はできますが、治療そのものは一生続くことになります。

きりがおか動物病院では、フェレットのリンパ腫に対する抗癌剤治療の目安を6ヶ月間隔でおこなっています。抗癌剤治療を開始した場合、6ヶ月間延命と生活観の向上を目指します。6ヶ月後、フェレットの状態を再確認し、抗癌剤治療を続けるか検討します。6ヶ月毎にこれを繰り返し、フェレットと飼主様にできるだけ負担をかけない治療を行っていきます。

5.フェレットのリンパ腫の抗癌剤治療について

まず、当病院では抗癌剤治療を行う前に、飼主様に十分に説明し、飼主様が納得した上で抗癌剤の治療を行っています。分からない事や疑問に思った事は、たとえ治療が始まった後でもかまいませんので、質問してください。飼主様の了解が得られないうちは抗癌剤治療を強制する事はありません。 リンパ腫に効果のある抗癌剤は多種ありますが、それぞれ投与経路や効果、副作用が違います。個々の特徴は後述しますので、ここでは一般的な問題点などについて記します。

抗癌剤を投与する場合、一部のものを除いてほとんどが静脈注射です。皮下にある真っ直ぐ伸びた静脈に針を刺し薬剤を注入するわけですが、繰り返し針を刺す事で血管は細く蛇行するようになります。そうなると注射が出来なくなりますので、別の部位の血管に注射をする事になります。フェレットは、このようにして注射が出来る静脈は両手両足の計4本しかありません。つまり、将来的に静脈注射が出来なくなる事となります。その場合、他の投与経路で可能な抗癌剤の治療となります。また、抗癌剤は体にとって異物です。どんな抗癌剤も、投与を繰り返すうちに耐性ができ、効果が出なくなります。つまり、将来的に使える抗癌剤がなくなってしまう場合があります。

抗癌剤は腫瘍細胞だけを標的にしているわけではありません。主に細胞分裂している若い細胞に対して効果を示します。リンパ腫細胞は増殖速度が速い細胞ですから、抗癌剤の効果が出やすいです。しかし、肝臓や腸粘膜、骨髄などの絶えず細胞分裂を続けている細胞も標的になってしまいます。このことが抗癌剤の副作用として現れます。

 抗癌剤投与は、一般的に多剤併用が原則となります。数種類の抗癌剤を同時に投与することで、細胞分裂をしている癌細胞の各時期に対応できるようにします。 抗癌剤を投与する前には、毎回必ず一般的な健康診断と血液検査をします。また、シコリの大きさを確認するためにレントゲン検査や超音波検査も行います。この段階で異常がある場合は、まずその異常を改善してから抗癌剤投与となります。その異常が抗癌剤の副作用による場合や、抗癌剤を継続しなければ急激に悪化する事が予測される場合、またはその異常がリンパ腫による場合は、異常部位の治療と同時進行で抗癌剤を投与したり、抗癌剤の投与量を減らしたりします。

抗癌剤投与中は毎日ステロイドの経口投与を行います。これは抗癌剤の体に対する負担を軽くするために絶対必要な投薬です。人の医療でも、ステロイドの副作用が問題となっていますが、抗癌剤の副作用や、リンパ腫のほうが緊急性を要します。副作用が出た場合は、その症状によって新たに薬を使うこととなります。(ステロイドの副作用についても後述します。)

抗癌剤治療の方法には、効果が十分発揮され、なおかつ体への負担が出来るだけ最小限になるように、いろいろな種類の抗癌剤を、どの順番で、どの量で、どの方法で投与するのが良いのか色々研究されています。きりがおか動物病院で主に行う方法は、COP-LAプロトコールにBLMを併用する方法か、タフツ大学プロトコールを参考にした方法の2通りです。どちらの方法を採用するかは、フェレットの状況と飼主様との相談で決定します。

6.抗癌剤治療の過程(COP-LA、BLM併用の場合)

  • 身体検査、レントゲン、血液検査等を行います。フェレットが抗癌剤治療を行える状態かどうか判断します。飼主様が抗癌剤治療を希望されれば、抗癌剤治療の開始となります。これらの検査は、抗癌剤を投与する際に毎回行います。
  • 初回は、エル-アスパラギナーゼという、副作用が弱い抗癌剤投与となります。急に、強い抗癌剤を投与すると体に負担がかかるため、この抗癌剤を皮下注射で投与し本格的な多剤併用による抗癌剤治療の前段階とします。効果があれば1~3日でシコリが小さくなります。エル -アスパラギナーゼの効果があった場合、また外観上効果がなくても次の抗癌剤で効果が期待できる場合は、エル-アスパラギナーゼ投与から7日以内に、本格的に多種類の抗癌剤の投与となります。エル-アスパラギナーゼは投与しやすい反面、耐性化しやすいため、今後は緊急時のために投与を控えます。
  • 次の抗癌剤はブレオマイシンの皮下注射とビンクリスチンの静脈注射です。これらの抗癌剤は2週間ごとの投与となります。また、フェレットの状態やエル-アスパラギナーゼの効果次第で、シクロホスファミドの自宅での経口投与も3日毎に行う場合もあります。通常は2週間間隔でこの3種類の抗癌剤を使用して維持していきます。
  • フェレットの状態や、今まで投与した抗癌剤の効果の出方次第で、さらに強い抗癌剤に変更する場合もあります。リンパ腫に最も効果的といわれるドキソルビシンの静脈注射は3週間毎となり、1種類のみの投与です。しかし、強い効果が期待できる反面、副作用も出る可能性が高くなります。
  • 抗癌剤が有効に作用し、検査上リンパ腫が診断できなくなれば、抗癌剤の投与間隔を徐々に延長していきます。最終的に抗癌剤の投与を中止できれば、再発の危険はありますが、かなりの延命が期待できます。しかし、そこまで順調に治療できるのは、抗癌剤治療を行っているフェレットのごく一部で、実際はうまく延命できていても2~4週間ごとの抗癌剤投与を欠かせない場合がほとんどです。

7.抗癌剤治療の費用について

 抗癌剤を投与する際、必ず事前に血液検査やレントゲン検査などの諸検査を行います。また、抗癌剤の種類によっては入院点滴治療が必要となります。これらの検査費用に抗癌剤投与費がかかるため、1回の抗癌剤治療にだいたい一~二万円近くかかります。また、抗癌剤の投与を開始した1~2ヶ月間は、投与間隔も短いため、その分経費の月毎の合計は大きくなります。

8.フェレットに使用している抗癌剤の種類

(1)エル-アスパラギナーゼ(商品名:ロイナーゼ)
投与経路:皮下注射
投与間隔:7日以内
作用・適応:リンパ細網系腫瘍に効果。癌細胞に必要な栄養の生成過程の一部を止めることにより、癌細胞の枯渇させると言われている(蛋白合成抑制)。正常細胞はこの栄養素を必要としないため致命的な副作用が少ない。4~5回の投与で耐性ができるため多用せず、他の抗癌剤の投与が困難なときのためのレスキュー用とするのが一般的。
副作用:アレルギー反応、白血球減少症、播種性血管内凝固症候群、膵炎

(2)ブレオマイシン(商品名:ブレオ)
投与経路:皮下注射
投与間隔:7日毎(ビンクリスチンと同時投与の場合は14日以内)
作用・適応:扁平上皮癌、その他の癌に効果。細胞分裂のG1・S・M期に作用し細胞分裂を中止させる。細胞分裂中の細胞以外にも効果。腎臓から排泄されるため、腎不全では投与量を控える。
副作用:アレルギー反応、肺線維症(総累積投与量200mg/m2

(3)ビンクリスチン(商品名:オンコビン)
投与経路:静脈注射
投与間隔:7日毎(ブレオマイシンと同時投与の場合は14日以内)
作用・適応:可移植性生殖器肉腫、リンパ肉腫に効果。細胞分裂のM期に作用する。抗癌剤投与時に起こりやすい血小板減少症にならず、増加させる効果がある。
副作用:末梢神経障害、感覚異常、血管周辺の壊死、稀に白血球減少症 

(4)ドキソルビシン(商品名:アドリアシン) 投与経路:静脈注射
投与間隔:3週間毎
作用・適応:リンパ肉腫、骨源性肉腫、その他の癌・肉腫。細胞分裂中の細胞以外にも効果。細胞毒性のある抗生物質。遺伝子(DNA、RNA)を傷害し(癌)細胞を破壊する。投与時に心中毒を起こす場合があるため、投与に時間をかけなければならない(最低半日の入院が必要)。
副作用:骨髄抑制(白血球減少症、血小板減少症)、悪心、出血性大腸炎、嘔吐、血管外組織壊死、まれに腎不全、投与時の心中毒、投与2日後まで尿が赤くなることがある。総累積投与量180~240mg/m2

(5)シクロホスファミド(商品名:エンドキサンP)
投与経路:経口投与
投与間隔:2~3日毎(夜間の投与は避けること)
作用・適応:リンパ細網系腫瘍、乳腺癌、肺癌、肥満細胞腫、その他の肉腫。細胞分裂中の細胞以外にも効果。
副作用:無菌性出血性膀胱炎、骨髄抑制、嘔吐

(6)その他の抗癌剤:上記の抗癌剤で効果がなかった場合や他の腫瘍の場合に投与。

ビンブラスチン(商品名:エクザール)
投与経路:静脈注射
投与間隔:7日毎(ブレオマイシンと同時投与の場合は14日以内)
作用・適応:リンパ肉腫、肥満細胞種、その他癌。細胞分裂のM期に作用する。
副作用:胆管炎、骨髄抑制、嘔吐、血管周辺の壊死、末梢神経障害

シタラビン(商品名:キロサイド)
投与経路:静脈注射
投与間隔:7日以内
作用・摘要:リンパ腫、白血病、その他腫瘍。細胞分裂のG1期からS期への移行を妨げる。エル-アスパラギナーゼとの併用による相乗効果。
副作用:骨髄抑制、悪心、嘔吐、腎毒性、肺毒性

ステロイド(商品名:プレドニゾロン)狭意での抗癌剤とは違います。
投与経路:皮下注射、経口投与 投与間隔:1日1~2回
作用・適応:単味でもリンパ細網系腫瘍、肥満細胞腫に効果。抗ショック、抗アレルギー、抗炎症作用。抗癌剤治療時の補投与薬。細胞毒性なし。
副作用:多飲多尿、長期使用により副腎皮質機能異常、免疫力低下、胃潰瘍。

 

2002年5月著
2012年1月改
きりがおか動物病院
院長 関口 諭